サーキュラー建築とは?建材の再利用と建設廃棄物削減の考え方を解説
建設業界では、ZEB、建築GX、建設DX、ライフサイクルカーボンといった言葉とあわせて、「サーキュラー建築」への関心が高まっています。サーキュラー建築とは、建物や建材を使って捨てるのではなく、長く使い、改修し、再利用し、再資源化して、資源を循環させる建築の考え方です。
従来の建築では、資源を採掘し、建材を製造し、建物を建て、解体後に廃棄するという一方向の流れが中心でした。サーキュラー建築では、設計段階から将来の改修・解体・回収・再利用までを考え、建物のライフサイクル全体で資源の価値を残すことを目指します。
この記事では、サーキュラー建築の意味、建設廃棄物削減が求められる背景、建設リサイクル法との関係、建材の再利用・再資源化、解体しやすい設計、建築GX・建設DXとのつながりを建設会社向けに整理します。

サーキュラー建築とは
サーキュラー建築とは、建物や建材をできるだけ長く使い、廃棄物を減らしながら資源を循環させる建築の考え方です。英語ではCircular ArchitectureやCircular Constructionと呼ばれ、サーキュラーエコノミーを建築分野に適用した考え方として使われます。
環境省は、循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行について、一方向型の線形経済から、資源を効率的・循環的に有効利用する経済社会への移行と説明しています。建築分野でこれを実現するには、建物を単なる完成物として見るのではなく、材料の集まり、将来の資源ストックとして捉える視点が必要です。
つまりサーキュラー建築では、「建てる前」「使っている間」「改修するとき」「解体するとき」「次に使うとき」までを一連の流れとして考えます。建物の長寿命化、用途変更への対応、分解しやすい納まり、再利用できる部材、材料情報のデータ管理が重要になります。
なぜサーキュラー建築が注目されているのか
建設廃棄物の削減が求められている
建設工事では、コンクリート、アスファルト、木材、金属、石膏ボード、ガラス、プラスチックなど多くの資源が使われます。一方で、解体・改修・新築工事では大量の建設副産物も発生します。国土交通省の建設副産物実態調査の概要では、建設廃棄物は全産業廃棄物の排出量の約2割を占めるとされています。
平成30年度建設副産物実態調査では、建設廃棄物の再資源化・縮減率は97.2%まで上がっています。これは建設リサイクルの取り組みが進んできたことを示す一方で、国土交通省が「建設リサイクル推進計画2020」で示すように、今後は単にリサイクル率を高めるだけでなく、再生材の利用方法や付加価値を重視する「質」の向上が重要になります。
資源制約とサーキュラーエコノミーへの移行
経済産業省は、成長志向型の資源自律経済戦略で、資源制約、廃棄物処理の困難性、カーボンニュートラル対応などを背景に、サーキュラーエコノミーへの移行が必要だと整理しています。建築は大量の資源を使う分野であるため、材料を一度使って終わらせない仕組みづくりが重要です。
特に、既存建物の更新・改修が増える時代には、解体で発生する材料をどう扱うかが大きな課題になります。サーキュラー建築は、廃棄物処理の問題だけでなく、建材調達、CO2削減、地域の資源循環、企業のESG対応にも関わるテーマです。
建設リサイクル法との関係
日本では、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律、いわゆる建設リサイクル法により、一定規模以上の対象建設工事で分別解体等と再資源化等が義務づけられています。環境省の概要では、対象となる工事や特定建設資材について整理されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる考え方 | 一定規模以上の建設工事で、分別解体等と再資源化等を行う |
| 主な特定建設資材 | コンクリート、アスファルト・コンクリート、木材など |
| 代表的な対象工事 | 建築物の解体、新築・増築、修繕・模様替、土木工事など |
| 実務上のポイント | 発注者への説明、届出、分別解体、再資源化、発注者への報告を適切に行う |
建設リサイクル法は、サーキュラー建築の土台になる制度です。ただし、法律で求められる分別解体や再資源化を守るだけでは、サーキュラー建築としては十分とは言えません。サーキュラー建築では、設計段階から将来の改修や解体を考え、建材をできるだけ高い価値のまま次に使えるようにすることが重要です。
サーキュラー建築を実現する主な取り組み
建物を長く使う、改修しやすくする
最も基本的な取り組みは、建物を長く使うことです。建物を短期間で壊して建て替えるのではなく、構造躯体を長く使い、設備や内装を更新しやすくすることで、資源の消費と廃棄物の発生を抑えられます。
そのためには、構造、外装、内装、設備の更新周期を分けて考える必要があります。設備配管を点検・交換しやすくする、内装を用途変更しやすくする、部材を標準化する、将来の増改築を想定する。こうした設計上の工夫が、サーキュラー建築の第一歩になります。
再生建材・再利用材を活用する
代表的な取り組みが、再生建材や再利用材の活用です。解体工事で発生したコンクリートを再生骨材として利用する、アスファルト・コンクリート塊を再生アスファルト混合物として使う、木材や鋼材を再利用するなどの方法があります。
重要なのは、単に「リサイクル材を使う」だけではなく、用途に応じた品質確認、トレーサビリティ、調達ルート、施工性、コスト、維持管理まで確認することです。発注者へ提案する場合は、環境価値だけでなく、性能と責任範囲を明確に説明する必要があります。
解体・再利用しやすい建物を設計する
サーキュラー建築では、将来の解体を前提に設計することも重要です。これをDesign for Disassembly、またはDesign for Deconstructionと呼ぶことがあります。部材を接着や一体打ちで完全に固めるのではなく、機械的な接合、分解しやすい納まり、材料ごとの分別がしやすい構成を検討します。
例えば、内装材を容易に取り外せるようにする、設備更新用のスペースを確保する、異なる材料を過度に複合化しない、解体手順や分別方法を図面やBIMに残すといった方法があります。これにより、改修時の廃棄物を減らし、解体時に建材を回収しやすくなります。
材料情報をデータとして残す
建材を将来再利用するには、その材料が何でできているのか、どこに使われているのか、どのような性能を持つのか、いつ施工・交換されたのかを把握できる必要があります。海外では、建物や材料の情報を記録するMaterial PassportやBuilding Passportという考え方も広がっています。
BIMやデータベースで、部材名、数量、仕様、メーカー、施工位置、CO2情報、交換履歴、再利用可否を整理できれば、将来の改修・解体時に判断しやすくなります。これはサーキュラー建築と建設DXが接続する重要な部分です。
サーキュラー建築と建築GX・建設DXの関係
サーキュラー建築は、建築GXと深く関係しています。建材を長く使い、再利用や再資源化を進めれば、新しい建材を製造する際のエネルギーやCO2排出、廃棄処理に伴う環境負荷を抑えられます。省エネ性能だけでなく、建材の製造から解体・再利用までを含めたライフサイクル全体の視点が必要になります。
また、サーキュラー建築は建設DXとも相性が高い取り組みです。BIM、施工データ、材料台帳、写真、日報、CO2算定データをつなげることで、建材の履歴を管理し、改修・再利用・再資源化の判断に使えるようになります。Speciateでは、BIM活用支援、CO2算定コンサルティング、データ入力代行、ML自動入力支援を通じて、建設会社の建築GX・建設DXに必要なデータ整備を支援しています。
関連テーマとして、BIPV、ゼロウォータービル、建設DXの基礎解説もあわせて確認すると、建物の環境性能をより広い視点で整理しやすくなります。
建設会社が提案前に確認すべきポイント
サーキュラー建築を提案する際は、環境に良いという抽象的な説明だけでは不十分です。実際にどの材料を循環させるのか、どの段階で廃棄物を減らすのか、品質やコストをどう担保するのかを整理しましょう。
- 建物の用途、耐用年数、将来の改修・用途変更の可能性を確認する
- 再利用・再資源化しやすい材料と、混合廃棄物になりやすい材料を分けて考える
- 分別解体しやすい納まり、接合方法、部材構成を設計段階で検討する
- 再生材・再利用材の品質、規格、調達先、施工実績を確認する
- BIMや材料台帳で、材料名、数量、施工位置、更新履歴を残す
- 建設リサイクル法、自治体の届出、発注者への説明・報告を確認する
- CO2削減効果、廃棄物削減効果、コスト、維持管理性を施主へ説明できる形にする
まとめ
サーキュラー建築は、建物や建材をできるだけ長く使い、再利用・再資源化することで、廃棄物を減らし、資源を循環させる建築の考え方です。従来の「使って捨てる」建築から、「長く使い、取り外し、記録し、次に活かす」建築へ転換することが重要になります。
日本では建設リサイクル法により、一定規模以上の工事で分別解体等と再資源化等が義務づけられています。さらに今後は、リサイクル率だけでなく、再生材の品質、建材の再利用、解体しやすい設計、材料情報のデータ管理といった「質」の視点が求められます。
建設会社にとっては、サーキュラー建築を建築GXや建設DXと結びつけて提案することが、施主への説明力を高めるポイントになります。BIMや帳票データを活用して材料情報を整備しておくことは、将来の改修、CO2算定、資源循環提案にも役立つでしょう。
よくある質問
サーキュラー建築とは何ですか?
サーキュラー建築とは、建物や建材をできるだけ長く使い、改修、再利用、再資源化、分別解体を前提に、資源を循環させる建築の考え方です。使って捨てる建築から、建材を次の建物や別用途へ戻す建築へ転換することを目指します。
サーキュラー建築と建設リサイクルの違いは何ですか?
建設リサイクルは、解体や施工で発生した建設副産物を分別し、再資源化する取り組みが中心です。サーキュラー建築はさらに設計段階から、長寿命化、部材交換、分解しやすさ、再利用しやすい材料選定まで考える点が特徴です。
サーキュラー建築は建築GXに関係しますか?
関係します。建材を長く使い、再利用や再資源化を進めることで、新材製造や廃棄処理に伴う環境負荷を抑えられます。省エネだけでなく、建物のライフサイクル全体で環境負荷を減らす建築GXの考え方とつながります。
建設会社は何から始めればよいですか?
まずは、建設廃棄物の分別、再生材の活用、改修しやすい設計、BIMによる材料情報の整理、解体時の回収計画から始めると現実的です。小さな改善を積み上げることで、建設DXや建築GXにもつながります。
BIMや建設DXはサーキュラー建築に役立ちますか?
役立ちます。BIMで材料、数量、部材位置、交換履歴、CO2情報を管理できると、改修計画、解体計画、材料回収、再利用判断がしやすくなります。材料情報をデータ化することは、サーキュラー建築の基盤になります。
参考リンク・出典
サーキュラー建築、建設リサイクル、循環経済、材料情報管理に関する公的・専門情報です。制度や統計は更新される可能性があるため、実案件では最新情報を確認してください。

