ゼロウォータービル(ZWB)とは?雨水・再生水を循環利用する次世代建築を解説

ゼロウォータービル(ZWB)は、建物で使う水をできるだけ建物内や敷地内で循環させ、上水道への依存を小さくする次世代建築の考え方です。近年はZEBや建築GXの文脈でエネルギーへの関心が高まっていますが、建物の環境性能を考えるうえでは「水」の使い方も重要です。

雨水をためてトイレ洗浄水や植栽散水に使う。手洗いやシャワーなどから出る比較的汚れの少ない排水を処理して再利用する。敷地内で雨水を浸透させ、下水道や河川への急激な流出を抑える。こうした取り組みを組み合わせることで、建物の水使用量とインフラ負荷を抑えることができます。

この記事では、ゼロウォータービルの基本、雨水利用・再生水利用・中水利用の仕組み、ZEBとの違い、導入メリット、実務上の課題、建設会社が施主に提案する前に確認すべきポイントを整理します。

ゼロウォータービル(ZWB)の雨水貯留・ろ過消毒・トイレ洗浄水・植栽散水・災害時利用を説明する図解
ゼロウォータービルは、雨水や再生水を建物内で循環利用し、上水道への依存と雨水流出を抑える次世代建築の考え方です。

ゼロウォータービル(ZWB)とは

ゼロウォータービルは、英語ではZero Water Building、またはNet Zero Water Buildingと呼ばれます。厳密な考え方では、建物の年間水使用量に対して、雨水、井水、排水再生水などの代替水利用量と、処理水や雨水浸透によって水源へ戻す水量を組み合わせ、水の収支をゼロに近づけることを目指します。

ただし、日本国内ではZEBのように一般に広く知られた制度名として定着している段階ではありません。そのため実務では、「水道水の使用量を減らす建物」「雨水や再生水を雑用水として活用する建物」「災害時にも一定の生活用水を確保しやすい建物」として説明すると伝わりやすくなります。

米国エネルギー省は、Low or Zero Water Buildingについて、総水使用量を最小化し、代替水源を最大化し、建物からの排水を少なくして元の水源へ戻す戦略として整理しています。建築設備の実務では、この考え方を日本の法制度、水質基準、敷地条件、維持管理体制に合わせて計画することが重要です。

なぜ今、ゼロウォータービルが注目されているのか

ゼロウォータービルが注目される背景には、気候変動、渇水リスク、豪雨災害、上下水道インフラの老朽化、企業の環境配慮への関心があります。建物はエネルギーだけでなく、水も継続的に消費します。特にオフィス、商業施設、学校、病院、宿泊施設、集合住宅では、トイレ、清掃、散水、厨房、空調補給水などに多くの水が使われます。

国土交通省は、2014年5月1日に施行された「雨水の利用の推進に関する法律」に基づき、雨水利用を推進しています。この法律では、雨水を一時的に貯留する施設にためた水を、水洗便所、散水、その他の用途に使うことを「雨水の利用」と定義しています。雨水利用は、水資源の有効利用だけでなく、下水道や河川への雨水の集中的な流出を抑える意味もあります。

国立環境研究所の環境技術解説でも、雨水や下水処理によって得られる再生水を、水洗トイレ、散水、修景、清掃など飲用以外の雑用水として利用することが紹介されています。つまり、ゼロウォータービルは突飛な未来技術ではなく、既にある雨水利用、中水利用、排水再利用、節水設備、グリーンインフラを建物全体で統合する考え方だと言えます。

ZWBとZEBの違い

ZWBと似た言葉に、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)があります。どちらも「建物の環境負荷を小さくする」という目的は共通していますが、対象が異なります。

比較項目ZEBZWB
正式な考え方ネット・ゼロ・エネルギー・ビルゼロウォータービル、ネットゼロウォータービル
主な対象エネルギー消費量、創エネ量、CO2排出量水使用量、雨水利用、再生水利用、排水、浸透
代表的な対策高断熱化、高効率空調、LED、太陽光発電、EMS節水器具、雨水貯留、排水再利用、中水配管、グリーンインフラ
評価の視点年間の一次エネルギー消費量を削減する水道水使用量を減らし、代替水・還元水を増やす
提案先への価値光熱費削減、脱炭素、補助金、企業価値向上水道料金削減、渇水対策、災害時用水、環境配慮

ZEBは既に国内で制度・評価・補助金と結びついた言葉として広く使われています。一方、ZWBは海外の環境認証や国内の先進事例、研究・実証を通じて関心が高まっている段階です。建設会社が施主に説明する際は、ZEBの水版と単純化するだけでなく、雨水利用や中水利用という具体策まで落とし込むと理解されやすくなります。

ZEBの基本については、ZEBとは?建設会社が提案前に知っておきたい基本用語を解説でも整理しています。エネルギーと水を別々に見るのではなく、建物全体のGX提案として組み合わせることが大切です。

ゼロウォータービルの仕組み

雨水を集めて雑用水として利用する

ゼロウォータービルの基本となるのが雨水利用です。屋根、屋上、敷地に降った雨水を雨樋や集水設備で集め、雨水貯留槽にためます。ためた雨水は、用途に応じてろ過や消毒を行い、水洗トイレ、植栽散水、清掃、修景用水などに活用します。

ポイントは、飲用水と雑用水を明確に分けることです。雨水をそのまま人が飲む水として扱うのではなく、上水道ほど高い水質を必要としない用途に使うことで、水道水の使用量を抑えます。国土交通省の雨水利用関連情報でも、水洗便所や散水などへの活用が示されています。

排水を処理して建物内で再利用する

雨水利用に加えて、建物内で一度使われた水を処理して再利用する方法もあります。手洗い、洗面、シャワー、空調ドレンなど、比較的汚れの少ない水を回収し、ろ過、膜処理、消毒などを行って再生水として使う仕組みです。

このように、上水道と下水道の中間で使う水は「雑用水」や「中水」と呼ばれます。国立環境研究所は、雑用水に使われる水源として再生水と雨水を挙げ、排水再利用方式や雨水利用方式として整理しています。建物内で水を循環させるには、用途ごとの水質管理、専用配管、逆流防止、設備点検が欠かせません。

敷地内で雨水を浸透・貯留し、流出を抑える

ゼロウォータービルでは、使う水を減らすだけでなく、雨水を敷地内でためる・しみ込ませるという視点も重要です。透水性舗装、雨庭、浸透ます、緑地、屋上緑化などを組み合わせることで、雨水が一気に下水道や河川へ流れ込むことを抑えられます。

豪雨時の流出抑制は、建物単体の環境配慮にとどまらず、周辺地域の浸水リスク低減にも関係します。水資源の有効利用と都市の雨水対策を同時に考える点が、ゼロウォータービルの大きな特徴です。

ゼロウォータービルのメリット

水道使用量と水道料金を削減できる

雨水や再生水をトイレ洗浄水、散水、清掃などに使うことで、上水道の使用量を削減できます。建物規模が大きく、トイレ利用者数が多いオフィス、学校、商業施設、公共施設では、雑用水として使える水量も大きくなります。

水道料金や下水道使用料は地域や契約条件によって異なりますが、長期運用する建物ではランニングコスト削減の効果を期待できます。建設会社が提案する際は、節水器具の導入、水使用量の見える化、雨水利用設備の容量、維持管理費を含めて試算することが重要です。

災害時の生活用水・トイレ用水を確保しやすい

災害時に断水が起こると、飲用水だけでなく、トイレ洗浄水や清掃用水の不足が大きな問題になります。雨水貯留槽や再生水設備を備えた建物では、平常時の節水だけでなく、非常時の生活用水確保にもつながります。

高砂熱学工業の技術解説では、雨水貯留を行っていた施設で上水道の供給停止時にもトイレ使用を継続できた事例に触れられています。建物のBCPやLCPを考えるうえで、電気だけでなく水の冗長性を確保することは重要です。

環境負荷とインフラ負荷を抑えられる

水道水をつくり、建物へ送り、使った水を下水処理するにはエネルギーが必要です。建物内や敷地内で水を有効利用できれば、地域の上下水道インフラへの負荷を抑えることにつながります。

また、雨水をためたり浸透させたりする仕組みは、豪雨時の雨水流出抑制にも役立ちます。建築GXというとCO2削減に目が向きがちですが、水資源の有効利用、雨水流出抑制、災害時の機能維持も、持続可能な建築を考えるうえで重要な評価軸です。

企業の環境配慮や施設価値を伝えやすい

環境配慮型の建物は、入居者、利用者、地域、投資家、自治体に対する説明力が高まります。ZEB、BIPV、EMS、省エネ設備と同じように、ZWBの考え方も企業のサステナビリティ発信に活用しやすいテーマです。

特に公共施設、教育施設、研究施設、オフィスビル、商業施設では、見える化パネルや館内サインと組み合わせることで、利用者へ水循環の取り組みを伝えられます。建物の環境価値を「見せる」提案としても有効です。

導入時の課題と注意点

初期コストと設備スペース

ゼロウォータービルを実現するには、雨水貯留槽、排水処理設備、ポンプ、ろ過装置、消毒設備、専用配管、制御盤、点検スペースが必要になります。そのため、一般的な給排水設備だけで計画する場合より初期コストが増えることがあります。

特に既存建物の改修では、貯留槽を置くスペース、配管ルート、床荷重、機械室の余裕、既存設備との接続が課題になります。新築であれば、基本設計の段階から設備スペースを確保することで、無理のない計画にしやすくなります。

水質管理と衛生面のリスク管理

雨水や再生水を利用する場合、安全で衛生的に使うための水質管理が欠かせません。国立環境研究所の解説でも、雑用水は用途ごとに必要な水質があり、処理・供給・利用までのシステムとして考える必要があるとされています。

上水系統と雑用水系統を誤って接続しないこと、逆流を防ぐこと、フィルターや消毒設備を定期的に点検すること、貯留水の滞留や臭気を防ぐことが重要です。飲用水、手洗い水、雑用水の用途を曖昧にすると、衛生上のリスクが高まります。

雨水量の季節変動とバックアップ水源

雨水は自然条件に左右されます。降雨量が多い時期には十分な水量を確保できても、渇水期や降雨の少ない期間には雨水だけでは足りないことがあります。そのため、ZWBを目指す建物でも、上水道を完全になくすのではなく、バックアップ水源として残す設計が現実的です。

大成建設の実証事例でも、既設の雨水利用設備に加え、排水再利用設備を導入して上水使用量の削減を目指す取り組みが紹介されています。雨水利用だけに頼るのではなく、節水、排水再利用、運用改善を組み合わせることがポイントです。

維持管理を前提にした計画が必要

雨水利用設備や排水再利用設備は、設置して終わりではありません。水質確認、フィルター交換、槽内清掃、ポンプ点検、薬剤管理、異常時対応など、継続的な維持管理が必要です。

建設会社が提案する場合は、導入効果だけでなく、誰が、どの頻度で、どの項目を点検するのかまで示す必要があります。維持管理の手間を軽く見積もると、運用開始後に使われなくなるリスクがあります。

建設会社が提案前に確認すべきポイント

ゼロウォータービルは、建築、給排水衛生設備、電気設備、外構、維持管理、BCPを横断するテーマです。施主へ提案する際は、環境価値だけでなく、実際に運用できる計画かどうかを確認しましょう。

  • 建物用途ごとの水使用量を把握する
  • トイレ、散水、清掃、修景など雑用水に置き換えられる用途を整理する
  • 雨水の集水面積、降雨量、貯留槽容量を確認する
  • 雑排水や空調ドレンなど再利用できる水源を検討する
  • 飲用水と雑用水の配管系統を明確に分ける
  • ろ過、消毒、ポンプ、制御、逆流防止など必要設備を整理する
  • 断水時に何日分のトイレ用水・生活用水を確保するか決める
  • 維持管理費、点検頻度、責任分界、異常時対応を事前に決める
  • 雨水利用や水循環に関する自治体助成制度の有無を確認する

国土交通省は、雨水利用施設の設置推進に向けて事例集やガイドラインを整備しており、全国のおよそ300の地方公共団体で雨水タンクや雨水浸透ますなどに関する助成制度が設けられていると紹介しています。補助や助成は自治体によって条件が異なるため、案件ごとに最新情報を確認することが重要です。

ZWBと建設DX・BIM・CO2算定の関係

ゼロウォータービルの提案では、給排水設備図、配管ルート、貯留槽容量、排水処理設備、外構計画、降雨データ、用途別水使用量を整理する必要があります。そのため、BIMやデータ管理との相性が高い分野です。

BIM上で貯留槽、配管、機械室、メンテナンススペースを整理できれば、設計段階から水循環の仕組みを可視化できます。施主に対しても、「どこで雨水を集め、どこで処理し、何に使うのか」を図面や3Dモデルで説明しやすくなります。

また、建築GXの提案では、CO2排出量だけでなく、水道使用量、下水道負荷、災害時のレジリエンスも評価軸になります。Speciateでは、BIM活用支援CO2算定コンサルティングML自動入力支援データ入力代行を通じて、建設会社のGX・DX提案に必要なデータ整理を支援しています。

関連するテーマとして、EMSの基本と導入メリット建材一体型太陽光発電(BIPV)ゼネコンDX支援もあわせて確認すると、エネルギー・水・データを統合した建築提案を考えやすくなります。

まとめ

ゼロウォータービル(ZWB)は、雨水や再生水を活用し、建物で使う水をできるだけ敷地内で循環させる次世代建築の考え方です。雨水をトイレ洗浄水や散水に使う、雑排水を処理して再利用する、雨水を貯留・浸透させて流出を抑えるといった取り組みを組み合わせることで、上水道への依存とインフラ負荷を下げられます。

メリットは、水道使用量の削減、災害時の生活用水確保、環境負荷の低減、企業のサステナビリティ発信などです。一方で、初期コスト、設備スペース、水質管理、維持管理、雨水量の変動といった課題もあります。

建設会社にとって重要なのは、ZWBを流行語として扱うのではなく、雨水利用、中水利用、排水再利用、BCP、BIM、建築GXをつなぐ実務テーマとして理解することです。ZEBやEMS、BIPVと組み合わせて提案できれば、施主に対してより広い環境価値とレジリエンスを示せるようになります。

よくある質問

ゼロウォータービル(ZWB)とは何ですか?

ゼロウォータービルは、節水、雨水利用、排水再利用、グリーンインフラなどを組み合わせ、建物で使う水と代替水・還元水の収支をできるだけゼロに近づける水資源自立循環型建築の考え方です。

ZWBとZEBの違いは何ですか?

ZEBは建物のエネルギー消費量を実質ゼロに近づける考え方です。一方、ZWBは水道水の使用量、雨水・再生水利用、排水・浸透など、水の収支に着目します。どちらも持続可能な建築を目指す点は共通しています。

雨水はどのような用途に使えますか?

一般的には、ろ過や消毒を行ったうえで、水洗トイレ、植栽散水、清掃、修景用水など、飲用以外の雑用水として利用されます。用途に応じた水質管理と上水系統との分離が重要です。

ゼロウォータービルは災害対策になりますか?

雨水貯留槽や再生水設備を備えることで、断水時にトイレ洗浄水や生活用水を確保しやすくなります。ただし、飲用水として使うには別の水質基準や処理が必要になるため、BCP計画では用途を明確に分ける必要があります。

導入時の主な課題は何ですか?

初期コスト、貯留槽や処理設備の設置スペース、専用配管、水質管理、維持管理、季節による雨水量の変動、衛生面のリスク管理が課題です。建物用途と運用体制に合わせた計画が必要です。

参考リンク・出典

ゼロウォータービル、雨水利用、再生水利用、水循環に関する公的・専門情報です。制度や助成制度は更新される可能性があるため、実案件では最新情報を確認してください。

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